摂食嚥下障害とは
食べ物を認識して口に運び、噛んで飲み込み、食道を通って胃へ送り込むまでの一連の動作を摂食嚥下と言います。
この動作がうまくいかない状態を摂食嚥下障害といいます。
健康な方にとっては当たり前のように行っている動作ですが、実は非常に複雑な神経と筋肉の協調運動によって成り立っています。
摂食嚥下障害は高齢者に多く見られますが、小児においても発達の遅れや疾患によって生じることがあります。
今回は摂食嚥下についてのお話です。
高齢者における摂食嚥下障害
高齢になると飲み込む力や噛む力が低下します。
加齢に伴う筋力の衰えや唾液分泌量の減少、歯の喪失などが主な原因です。
脳卒中やパーキンソン病などの疾患によって摂食嚥下機能が低下することもあります。
高齢者の摂食嚥下障害で特に注意が必要なのは、むせが起こらない不顕性誤嚥です。
通常、誤嚥が起こると反射的にむせますが、高齢者ではこの反射が鈍くなり、気づかないうちに食べ物や唾液が気管に入り込んでしまうことがあります。
この状態が続くと誤嚥性肺炎という深刻な合併症を引き起こす危険性があります。
小児における摂食嚥下障害
小児の摂食嚥下障害は発達段階における機能獲得の遅れや、先天的な疾患によって生じることがあります。
離乳食の進みが遅い、食べこぼしが多い、特定の食べ物を極端に嫌がる、食事中によくむせるなどのサインが見られます。
口腔機能発達不全症として診断される場合もあり、適切な時期に適切な訓練を受けることが重要です。
舌の動きが拙い、口唇の力が弱い、噛む力が不十分などの問題が背景にあることが多く、これらは早期に対応することで改善が期待できます。
摂食嚥下障害が引き起こす問題
摂食嚥下障害は単に食事がしにくいというだけでなく、全身の健康に深刻な影響を及ぼします。
年齢を問わず生命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な対応が求められます。
どのような問題が生じるのかを確認してみましょう。
誤嚥性肺炎のリスク
摂食嚥下障害で最も深刻な問題が誤嚥性肺炎です。
食べ物や唾液が誤って気管に入り、そこに含まれる細菌が肺に到達することで肺炎を引き起こします。
特に高齢者の場合、口腔内の細菌数が多い状態で不顕性誤嚥が起こると、知らない間に肺炎を発症してしまいます。
誤嚥性肺炎は高齢者の死因として上位に位置しており、一度発症すると繰り返しやすい特徴があります。
口腔衛生状態が悪いほど誤嚥性肺炎のリスクは高まるため、日々の口腔ケアが予防において非常に重要になります。
低栄養と体重減少
摂食嚥下障害があると食事に時間がかかったり、食べること自体が苦痛になったりして、食事量が減少します。
結果として必要な栄養が摂取できず低栄養状態に陥ります。
高齢者では筋肉量の減少、免疫力の低下、認知機能の衰えなどを引き起こし、要介護状態につながる可能性があります。
小児の場合には成長発達に悪影響を及ぼし、身長や体重の増加不良、運動機能や言語発達の遅れなどが生じることがあります。
栄養状態の悪化は全身の健康状態を損なうため、摂食嚥下機能の維持・改善は生命維持において極めて重要です。
QOL(生活の質)の低下
食事は人生の楽しみの一つです。
摂食嚥下障害によって好きなものが食べられなくなったり、食事に恐怖を感じたりすると、QOLが著しく低下します。
高齢者では社会的な交流の場である食事の機会が減り、孤立や抑うつ状態につながることもあります。
小児では食事の時間が家族との大切なコミュニケーションの場であり、そこでの困難は心理的な負担となります。
また、窒息の危険性も常に付きまとうため、介護者や保護者も常に緊張を強いられることになります。
摂食嚥下障害のサインと対策
摂食嚥下障害は早期に発見し対応することで、重篤な合併症を予防できる可能性があります。
日常生活の中でどのようなサインに注意すべきか、そしてどのような対策があるのかを知っておきましょう。
摂食嚥下障害のサイン
高齢者では食事中や食後によくむせる、食べるのに時間がかかるようになった、食べ物が口に残る、飲み込んだ後に声がガラガラする、体重が減少している、食事を嫌がるようになったなどのサインがあります。
小児では離乳食の進みが遅い、食べこぼしが年齢に比して多い、特定の硬さや形状の食べ物を極端に嫌がる、食事中に頻繁にむせる、口がいつも開いている、よだれが多いなどが挙げられます。
これらのサインに気づいたら早めに歯科医院や医療機関に相談することが大切です。
摂食嚥下障害への対策
摂食嚥下障害への対策として、まず口腔ケアの徹底が重要です。
口腔内を清潔に保つことで誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができます。
食事の形態を調整することも有効です。
飲み込みやすいようにとろみをつけたり、適切な硬さに調理したりします。
姿勢も重要で、背筋を伸ばし顎を引いた姿勢で食事をすることで誤嚥しにくくなります。
歯科医院や医療機関では摂食嚥下機能の評価と訓練を受けることができます。
舌や口唇の運動訓練、嚥下訓練などを通じて機能の維持・改善を図ります。
必要に応じて言語聴覚士や管理栄養士など多職種と連携した支援を受けることも可能です。
まとめ
摂食嚥下がうまくいかないと、どのような問題が起こるのかについて解説しました。
摂食嚥下障害は高齢者だけでなく小児にも見られる問題で、誤嚥性肺炎や低栄養、QOLの低下など深刻な影響を及ぼします。
食事中のむせや体重減少、食事時間の延長などのサインに気づいたら、早めに歯科医院や医療機関に相談しましょう。
口腔ケアの徹底や食事形態の調整、専門的な訓練を通じて、摂食嚥下機能の維持・改善を図ることができます。
食べる楽しみを守り、健康な生活を送るために摂食嚥下機能を大切にしましょう。






