歯科における再生療法

失われた組織や臓器を再び修復する再生医療は医学だけでなく歯学にも少しずつ応用されてきています。

iPS細胞によって臓器や組織を作り出すニュースなどを聞いたことがあるかもしれません。

残念ながら歯を再生するところまでには至っていないのが現状ですが、歯科ではどのような再生医療が普及してきているのかを確認してみましょう。

 

 

代表的な歯科の再生医療

歯を失う原因として多いのは、虫歯や歯周病によって歯そのものや歯を支える歯周組織が失われることです。

これに対応するように特に歯を支える歯周組織に対する再生医療が実際の臨床現場では行われつつあります。

歯周組織というのは、歯を支える骨（歯槽骨）、歯肉、歯根膜、セメント質からなります。

歯周病では徐々にこれらの組織が失われてしまいます。

歯周病において一部の歯周組織が失われた場合や、インプラント治療において骨が足りずに骨を造成させる場合に再生医療が行われることが、現在では一般的に行われるようになってきています。

 

 

再生医療によるメリット

歯科における再生医療においてのメリットは、特に失われた骨や繊維を回復させることです。

これは、将来的に抜かなくてはいけない状態の歯を長持ちさせることができるようになるということです。

もちろん状態によっては上手くいかない場合や適応症例などの条件はありますが、歯の延命を図ることができます。

また抜歯を余儀なくされた場所にインプラントをしたいと思っても、必要な骨がなければインプラント治療はできません。

再生医療によって、骨の高さや幅の回復が可能であれば治療が可能になるかもしれません。

 

 

 

 

再生医療の代表例

歯科の再生医療の代表例として歯周組織の回復と顎の骨の造成が挙げられます。

あまり一般的ではありませんが、失われた歯の神経の再生医療を行っている歯科医院もあります。

虫歯等で神経をとった後の歯に再度神経を通わせる再生医療です。

この治療方法は施術できる施設が限定され、まだ一般的な治療とは言い難いため別の機会でお話します。

 

 

歯周病に対する再生医療

歯を失う原因の1位として知られる歯周病ですが、初期には痛みなく進行する怖い疾患です。

歯周病によって歯を支える繊維や骨が溶かされていきます。

進行した場合では歯が揺れてしまい抜歯を選択することになります。

以前から歯周病治療において再生医療はありましたが保険診療では行えず、自由診療でのみ適応となっていました。

しかし2016年ごろから保険でも歯周組織を再生する薬剤を使用することが可能となりました。

これにより金銭的なハードルを下げて治療を行うことが可能となりました。

では、これまでの自由診療のものがなくなったのかというと、そうではありません。

保険では使用できる薬剤や材料に制限があります。

したがって、症例によっては自由診療の材料を使用して治療を行うこともあります。

 

 

顎の骨に対する再生医療

顎の骨に対する再生医療は主にインプラント治療におけるものです。

インプラントは顎の骨にインプラント体と呼ばれるものを埋め込みます。

顎の骨は幅や厚みがありそうに思いますが、抜歯を行った部位は顎の骨は痩せてしまいます。

この結果、抜歯をした部位にインプラントの治療を選択したくてもできなくなることがあります。

痩せた骨にインプラントを入れようとすると顎の骨にある神経や血管や、上顎洞と呼ばれる骨の空洞にインプラントがぶつかったり入り込んでしまう可能性が出てくるからです。

再生医療では顎の骨が痩せてしまった部位に、薬剤や人工の骨と自分の骨などを使用して顎の骨にボリュームを出します。

これにより、インプラントができないと思われている部位にもインプラント治療が可能になることがあります。

 

 

 

 

再生医療の限界

再生医療は近年飛躍的に発展してきていると思いますが、現在はまだ顎の骨に細胞を注入して歯ができるということはありません。

実用化されるような話もなく、まだまだ先の話のようです。

現在の歯科における再生医療において一般的なものは、部分的な骨の欠損を補う治療がメインになります。

広範囲に及ぶ歯周病や重篤な歯周病などは再生医療の適応外となることがあります。

また、保険治療における歯周組織の再生医療は使用できる薬剤や材料が決まっていることも知っておく必要があります。

インプラントに関連する再生医療は保険診療の適応外となります。

もし、ご自身が再生医療の必要性や適応となるか気になる場合には、かかりつけ医に相談してみましょう。

 

 

 

 

まとめ

歯科における再生療法について確認してきました。

歯科では主に歯周病治療やインプラント治療における歯周組織や顎の骨の再生を目的とする場合が多いです。

これにより今まで抜歯になるまで様子を見ていた場所や、インプラント治療を諦めていた方も積極的に加療ができるかもしれません。

iPS細胞などの成果がメディアなどで取り上げられることがあります。

しかし、残念ながら細胞を使用してすぐに歯が復活するような再生医療はまだまだ先のようです。

今ある歯を大切にすることが何よりも大切です。

治療になってしまった場合の選択肢として再生医療があることも覚えておきましょう。