フッ素は体に悪い?
フッ素は私たちの身近なものに利用されています。
歯科では歯磨き粉などが代表的ですが、フライパンなどのフッ素樹脂加工や農薬などにも使用されています。
フッ素はこのように人体への使用もありますが、加工や薬剤などの用途として用いられることもあるため安全なのか疑問に持たれるかもしれません。
まず、フッ素は自然界では鉱物の形で存在していますが、単体としては存在していません。
通常身近にあるフッ素はフッ素化合物(フッ化物)として存在しています。
フッ素化合物は土壌や河川、飲食物にも含まれています。
決して特別な存在ではないのです。
2種類のフッ素化合物
フッ素化合物は有機フッ素化合物と無機フッ素化合物に大別されます。
有機フッ素化合物は炭素とフッ素が結合した化合物です。
代表的なものにはフッ素樹脂が挙げられます。
医薬品や農薬の分野でも有機フッ素化合物が使用されます。
無機フッ素化合物にはフッ化ナトリウムが挙げられます。
これは虫歯予防として効果を発揮し、今日の予防歯科では頻繁に使用されます。
以前、有機フッ素化合物が水質汚染問題として取り上げられたことがあります。
有機フッ素化合物は発がん性や肝臓や甲状腺への障害などが問題視されています。
歯科で使用するフッ化ナトリウムは無機フッ素化合物であり、有機フッ素化合物とは全くの別物です。
したがって適正使用によって問題なく使用可能です。
歯科で用いられるフッ素化合物
歯科で用いられるフッ素化合物の例としては、歯磨剤、歯面塗布、洗口剤などが挙げられます。
虫歯を予防するために使用するシーラントと呼ばれるものにもフッ素化合物が含まれるものもあります。
フッ素化合物として今日よく使用されるフッ化ナトリウムですが、これは虫歯予防効果が期待できるからです。
1つ目に、歯の質を強化し、虫歯の菌が生成する酸に強くすることです。
2つ目に、虫歯の原因菌と知られるミュータンス菌が出す酸の産生を抑制する効果が期待できます。
もちろん予防効果として期待できるのであって、必ず虫歯を防げるものではないので日頃の歯磨きや食習慣が大切になります。
フッ化物使用による悪影響
フッ化物は適切に使用すれば基本的にはその恩恵を享受できますが、使用する方法などを間違えると毒にもなります。
フッ化物による中毒症は、急性中毒と慢性中毒に大別できます。
急性中毒については、結論から言うと、まず起こり得ません。
欧米諸国ではフッ化物の錠剤を誤用しての中毒例はありますが、日本では錠剤の使用はなく可能性が極めて低いからです。
しかし、どのような対処法や中毒症状があるのかを確認しておきましょう。
フッ化物使用による急性中毒
急性中毒の主な症状としては、腹痛や嘔吐、下痢などの消化器症状が一般的ですが、重篤になると痙攣などの症状が出ることもあります。
中毒になった際には毒物の除去が優先されるため、吐かせる、胃洗浄やカルシウム含有の飲食物(例:牛乳やアイスクリームなど)を含ませるなどの対応を取ります。
摂取量が多い場合には、入院による加療が必要なこともあります。
これは例えば4歳ぐらいの子供が歯磨き粉の1本分を丸ごと飲み込んだ場合などが該当します。
また、保育園や幼稚園、小学校ではフッ化物洗口といって、虫歯予防のために洗口剤を使用することがあります。
週5回法と週1回法の2種類の方法があります。
年齢などにより使用する濃度が異なっています。
例えば、平均的な体重に成長している場合で4歳で体重15kg程度であれば、万が一誤って洗口すべき薬剤を誤飲しても、どちらの方法でも中毒量には至りません。
したがって、異常に摂取(例:低年齢児が歯磨き粉1本丸ごと飲み込む、洗口剤の数十回分を一気に服用するなど)をしなければ急性中毒になる可能性はないのです。
フッ化物使用による慢性的な影響
フッ化物による影響として慢性的なものに歯牙フッ素症(斑状歯)、骨フッ素症(骨硬化症)があります。
歯牙フッ素症(斑状歯)は歯の表面のエナメル質が作られる時期に過剰なフッ化物(2ppm程度)を摂取することによって発生します。
エナメル質が白濁したり、縞模様に褐色になったりと色が変わる場合や歯の表面が欠けるような症状が出ることもあります。
骨フッ素症は骨の形成に関わる疾患です。
症状として、関節の痛みや硬直、靭帯などの石灰化などがあります。
歯牙フッ素症よりも高い濃度(8ppm程度)かつ20年程度の長期間のフッ化物の服用で起こるとされています。
フッ化物の効果的な使用方法
適正なフッ化物の使用は生涯にわたって利用することによって、虫歯から歯を守ることにつながります。
使用方法はいくつかあり、一般的に子供に対して使用されることが多いと思うかもしれません。
しかし、高齢者になると歯茎が痩せて歯周病に罹患することが多くなります。
すると歯の根が見えてくるようになり、その部位が虫歯になる根面う蝕というものがあります。
この根面う蝕にもフッ化物は効果的なので、大人や高齢者もフッ化物の使用が望ましいです。
一般的に出生後はフッ化物の歯面塗布を定期的に行い、児童や小学校低学年でうがいができるようになればフッ化物洗口も効果的になります。
家庭でもフッ化物洗口は可能で、フッ化物入りの歯磨き粉の使用も良いでしょう。
まとめ
今回は、フッ素は体に悪いのかについて解説しました。
どんなにいいものも適切に適量でなければ毒になることもあります。
フッ素化合物も同様です。
一般的に使用されるものはフッ化ナトリウムであり、有機フッ素化合物とは全く異なるものなので安心して使用してください。
また、基本的に異常な量を使用しなければ中毒になることもありません。
フッ化物の使用は虫歯の罹患率を下げることが期待できるため、今日の予防歯科と深く関わります。
適切に積極的に普段の生活に取り入れ予防に努めましょう。






