喫煙の影響
喫煙が体によくないことはわかっていても喫煙者にとって禁煙は難しいことが多いことも事実です。
実際に歯周病の治療などで歯科医院に通院している方でも禁煙ができない方もいます。
しかし、お口の中に悪影響を及ぼすことは多くの論文等でも指摘されています。
実際にタバコには約200種類もの有害物質が含まれていると言われています。
中でも最も影響を与えるのが、一酸化炭素、ニコチン、タールです。
今回は、喫煙によって起こりうる歯周組織や歯周病の治療への影響を確認してみましょう。
喫煙による歯周組織への影響①
喫煙している方は歯周病が進行していても分かりにくいことがあります。
通常の状態であれば歯茎が炎症を起こした状態になると歯茎が腫れて赤みを帯び、出血することが多くなります。
しかし、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる働きがあるために出血が少なくなります。
また、一酸化炭素は組織への酸素の供給を妨げます。
血液循環が悪化して歯茎へ十分な酸素が行き届かなくなると、歯周ポケット内の細菌は繁殖しやすくなります。
また低栄養、低酸素状態の歯茎では炎症状態から改善するのに時間がかかります。
タールはいわゆるヤニになります。
それ自体が発がん性物質ですが、歯の着色や持続的な歯茎への悪影響を及ぼします。
喫煙による歯周組織への影響②
喫煙によって歯周病治療への悪影響も示唆されています。
喫煙は歯茎の炎症状態からの脱却が困難になり治癒も悪くなります。
歯周病治療では歯垢や歯石をはじめとする炎症物質を取り除く治療を行います。
しかし、喫煙者は歯茎が貧血状態になり、炎症の治癒が遅くなるため治療効果が得られにくいことが言われています。
歯周病治療には歯茎を切って行う外科治療や再生療法もありますが、非喫煙者と比べて良好な結果が得られにくいことも知られています。
喫煙により現在の歯茎の状態を悪化させることと治療効果が得られにくくなるという大きく2つの悪影響があります。
禁煙による効果
喫煙されている方は禁煙によって得られる効果にはどのようなものがあるのかを確認したいかもしれません。
喫煙されている方でも禁煙によってその効果が得られるということが示唆されています。
例えば、歯茎の血流量を評価した検査では歯茎の部位により多少誤差はありますが、概ね2週間程度の禁煙により非喫煙者と同等レベルまで血流量が回復している報告があります。
禁煙による効果はどの程度あるのかを確認してみましょう。
禁煙による歯周病予防
禁煙による歯周病の効果には主に予防と治療の両方の側面があります。
禁煙することにより、歯茎の炎症の改善や血流改善、貧血状態からの改善が期待できます。
これにより、免疫機能や細胞の働きが良くなり歯茎の抵抗性が向上し歯周病の悪化予防が見込めます。
もちろん歯周病の原因因子であるプラークの除去は大切ですが、禁煙による予防効果も大きいです。
また治療においても同様です。
歯周病治療の一環として行われる歯磨き指導は炎症の原因であるプラークを本人が取り除けるようにするように指導しています。
これは歯茎の炎症を取り除くために行なっています。
禁煙も歯茎の健康状態を改善させるために行う必要があります。
禁煙することは歯磨きと同様に歯周病治療の一環として捉える方が良いでしょう。
禁煙によって得られるその他の効果
禁煙は歯周病だけではなくインプラント治療にも関与してきます。
喫煙者と非喫煙者では喫煙者の方が2倍程度インプラント治療における失敗が多いとされています。
歯周病に限らずインプラント治療においても禁煙は望まれます。
その他に歯周病は全身疾患にも関わりがあります。
歯周病原菌やそれが作り出す毒素は血管内に入り全身を巡ります。
したがって糖尿病、虚血性心疾患、感染性心内膜炎、誤嚥性肺炎、低体重児出産などに関わり多くの臓器に影響を及ぼします。
このことからも歯周病の悪化を引き起こさないように禁煙は大切になります。
加熱式タバコと歯周病
最近は紙タバコではなく加熱式タバコが多く普及してきました。
加熱式タバコではタールの含有が一般的に少ないため着色が少なくなります。
また、一酸化炭素の含有も少ないため紙タバコと比べて良いと思うかもしれません。
しかし、ニコチンの量はほとんど変わりがありません。
ニコチンによる血管収縮作用は紙タバコと変わらずにあるため歯茎にとっては良いとは言えません。
やはり、喫煙は歯周病にとってはリスクファクターとなります。
まとめ
禁煙が歯周病予防に効果的な理由について確認してきました。
喫煙は歯茎への悪影響が強く低栄養、低酸素、免疫力低下を起こします。
歯茎が炎症を起こしても出血が少なくなるため、歯周病の進行に自分で気がつかないことがあります。
気がついた時には重症になってしまっているということもあります。
喫煙は全身にも影響を及ぼしますが、歯周病も全身に影響を及ぼすことが知られている疾患です。
喫煙により歯周病が悪化すれば、全身疾患のリスクも高くなってしまいます。
歯周病の観点では、禁煙によって歯茎の血流量は約2週間程度で改善します。
喫煙しているからと諦めずに禁煙をどのようにしたらできるかを前向きに検討しましょう。
禁煙は非常に大変ですが、医師や歯科医師などに相談し、できることから少しづつ禁煙を目指しましょう。






