歯科治療とアレルギーの関連性
歯科治療に関係するアレルギーには歯科材料(主に金属)や薬剤に対するものが代表されます。
今回はこのうち金属に関するアレルギーのお話をしていきます。
歯科治療では治療の内容に金属を使った治療があります。
最近ではメタルフリーといって金属を使用しない治療も多くなってきています。
しかし、金属のメリットを活かすために治療の中で金属を使用する場面はまだまだ多くあります。
例えば詰め物や被せ物、入れ歯の針金、インプラントも金属です。
このように保険治療や自由診療の治療問わず金属を使用することは現在でもあるのです。
したがって、金属アレルギーのある患者さんは治療に対してやや注意する必要があります。
また、現在金属アレルギーの反応がなくても、時間の経過で金属アレルギーが出ることもあります。
アレルギーの機序と診断
金属アレルギーは口の中や耳にするピアスなど口や皮膚から体内に取り込まれた、微小な金属の粒子が体に入り込むことがきっかけで起こります。
金属は硬くて溶けないようなイメージがあるかもしれませんが、中学生や高校生の時に習った『イオン化』という現象によって目には見えませんが溶けていきます。
溶けた金属はナノ粒子として体内のタンパク質にくっつき、体の免疫担当細胞から異物として認識されます。
認識されてしまうと異物は排除するように働きかけるため、抗体などによる免疫反応が起こります。
結果として皮膚の発疹やただれ、口の中にも症状を起こすことがあるのです。
診断にはパッチテストが多く用いられ、48時間皮膚に試験薬をつけて反応を調べます。
歯科治療と金属アレルギー
歯科治療では多くの金属の種類が使用されます。
保険で用いられる金属には銀、パラジウムが用いられることが多いです。
これらはイオン化しやすい金属と言われています。
逆に自由診療で用いられている金はイオン化しにくい金属と言われています。
歯科治療で用いられる金属の多くは歯や歯茎、舌や頬などの粘膜に常に触れる機会が多く、アレルギーがある場合には触れる箇所が腫れる、赤みを帯びる、熱をもつなど炎症反応が起こりやすくなります。
したがって、金属アレルギーがある方は金属を使用しない治療やアレルギーを起こす金属を含まない治療を選択する必要があります。
歯科治療によるアレルギー
歯科治療によるアレルギーは代表的なものに金属アレルギーがありますが、金属アレルギーと関連するその他の疾患もあります。
歯の治療で使用した金属によって、口の中だけではなく、手や足などの皮膚が炎症を起こしたり、皮膚が剥がれるなどの症状を起こすこともあります。
どのようなものがあるかを確認しましょう。
金属アレルギー
歯科の中で金属アレルギーは気をつけなくてはいけないアレルギーの1つです。
金属アレルギーが疑われる場合には治療の選択肢が少なくなる場合があります。
近年治療の1つとして一般的になっているインプラントですが、インプラントも金属の人工歯根(※金属を使用しないインプラントもある)です。
インプラントで用いられる金属はチタンやジルコニウムが主になりますが、稀にアレルギーを持つ方もいます。
扁平苔癬
扁平苔癬(へんぺいたいせん)は中高年の女性に多い疾患です。
原因は特定されていませんが、一部に金属アレルギーとも関連することが示唆されています。
症状として頬や歯茎、唇などに発現し、痛みを伴うこともあります。
塗布薬や内服薬もあるためそれで改善を図ることもありますが、症状に波がありなかなか完治することが難しい疾患です。
掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は手や足に多発する発疹が特徴の疾患です。
明らかな原因はわかっていませんが、これも一部金属アレルギーが関連することが示唆されています。
痛みを伴うこともあるため、ステロイドやビタミンDの塗り薬などが処方されることがあります。
歯科治療によるアレルギーを解消させるには
アレルギーが起きてしまった場合には、原因を取り除かないと症状が繰り返されることが考えられます。
特に金属アレルギーのパッチテストにて該当する金属が口腔内の治療した部位にある場合には、外すことも検討しなくてはいけません。
また、金属アレルギーの心配を今後もなくすようにするにはメタルフリー治療(金属を用いない治療)が有効です。
金属を使用しない治療は自由診療だけではなく保険治療にもあります。
例としてはレジン(樹脂)です。レジンは白く自分の歯と同程度の色調を持ちます。
透明感はややありませんが、金属と比べれば自分の歯に近く、金属アレルギーの心配がないため、選択の一つとなります。
しかし、レジンはプラスチックなので、薄いと割れたり欠けたりすることがあります。
全ての症例に使用できるわけではないので、治療を受ける際に適応になるか主治医に相談してみましょう。
まとめ
歯科治療とアレルギーの関連性について確認してきました。
金属は今日でも歯科治療では用いられることが多い材料です。
しかし、金属を使用しない治療も徐々に進みつつあることも事実です。
その背景には金属価格の高騰もありますが、金属アレルギーへの対策もあります。
全ての症例に対して、金属不使用の治療が適応になれないこともある点は知っておきましょう。
もし、治療において金属を使用しない治療を希望する場合には、かかりつけ医に相談してみましょう。






