口腔内の細菌
口の中には細菌が常にいます。
生まれたての赤ん坊には細菌はいませんが、日々の生活の中で家族などから口の中に細菌が定着していきます。
虫歯や歯周病は細菌が原因であることが知られており、皆さんの中にはどのようにして細菌を減らしていけば良いのか知りたい方もいるかもしれません。
今回は口腔内の細菌をどのようにして減らし、増殖させないようにすればよいかなどを確認していきます。
口腔内と感染症の関係
口の中は鼻と同じように、外気から細菌やウイルスが入り込みやすい場所です。
どちらもそれらに対抗できるように、防御機構が体には備わっています。
唾液などの自浄作用も防御機構の一つと言えるでしょう。
口の中の環境が不衛生になると、この防御機構が乱れてしまいます。
結果として感染症にかかりやすくなったり、細菌に由来する疾患にかかりやすくなってしまいます。
口腔環境を整えること、唾液の分泌を促すことが、細菌などに由来する感染症を予防することにつながります。
唾液の重要性
唾液には様々な作用があります。
前述のような自浄作用や殺菌作用、口の中が酸性になった時に中和する働き、食物の消化を助けたり、味覚の感じ易さにも関与します。
唾液の分泌を促すことが口腔内の細菌の増殖を抑えることにつながるのですが、唾液の分泌が抑えられてしまうことがあります。
加齢によっても徐々に唾液の分泌が減ってしまうことは知られていますが、自己免疫疾患や常用薬の中には唾液分泌を抑える働きがあるものもあります。
唾液の分泌が弱い方は虫歯にもなりやすいため注意が必要です。
細菌の増殖を抑える方法
細菌の増殖を抑えるには、正しい口腔内の清掃や唾液の分泌の促進が重要です。
口腔内の清掃は単に歯ブラシを使用しての清掃だけでは不足になりがちです。
多くの方は、歯ブラシだけで清掃を終えてしまいます。
しかし、それでは歯と歯の間は磨けません。
舌の清掃も細菌の増殖を抑えることに寄与します。
どのようにして、清掃をすべきかを確認しましょう。
細菌の増殖を抑える歯磨き
歯磨きは単に歯を歯ブラシで磨くのではなく、汚れを落とせているかが重要です。
歯の表面は平面ではないため、どこを磨いているかを意識しながら磨くことが大切です。
咬む面(咬合面)、歯と歯茎の境目、歯と歯の間が非常に不潔になりやすいです。
咬合面は溝が深い場合には汚れが入り込まないように、若年者ではシーラントという溝を埋める処置などを行うことがあります。
歯と歯茎の間は歯ブラシを歯に対して斜めに(45度くらい)当てて清掃します。
歯と歯の間は歯ブラシでは清掃が不十分になります。
フロスを使用しないと清掃が困難です。
細菌の増殖を抑える舌清掃
舌は舌苔という汚れの付着がつきやすく、口臭の原因にもなりやすいです。
汚れは細菌に由来するものなので、定期的に清掃することにより細菌の増殖を抑えることができます。
舌は味覚を感じる繊細な場所のため、歯と同じ様な圧力で磨くと磨き過ぎの場合や痛めてしまう場合があるので注意が必要です。
力に注意して歯ブラシか舌ブラシを用いて清掃をすると良いでしょう。
うがいだけで細菌の増殖を抑えられるか?
1日の終わりに歯磨きをしてから就寝する方は多いと思います。
就寝中は唾液の分泌が減ってしまうため、就寝前の口腔ケアは非常に重要です。
しかし、就寝前は食事後であり仕事や学業などで疲れて歯磨きするのが面倒と思ってしまう日もあるかもしれません。
この様な場合にはうがいだけでも歯磨きの代わりになるでしょうか。
基本的には代わりにはならないと思っていいでしょう。
歯に付いている汚れは細菌の塊となりネバつきます。
細菌は成熟するとネバついて簡単に落としにくくなり、うがい薬中の殺菌成分なども効きにくくなります。
うがい薬の中には清涼感があるものがあるため、さっぱりした感覚になり汚れが落ちたと錯覚しがちです。
うがいで落ちるのは食べカス程度で、汚れの本体となる細菌の塊であるプラークは除去できないことがほとんどです。
補助的に使用して、細菌の増殖を抑えるようにしましょう。
唾液の分泌を促す
唾液は生理的にも加齢とともに分泌量が減ることが知られています。
唾液の作用は前述のように多岐に渡り、細菌の増殖防止や感染症予防において重要な役割をします。
唾液の分泌を促すには、個人で出来る事としては唾液腺のマッサージ、食事中に咬む回数を増やす、鼻呼吸をして口呼吸を止めるなどが挙げられます。
全身疾患や服用薬によっては唾液の分泌は減少することがあります。
唾液の分泌が非常に少ないドライマウスの方は人工唾液を処方してもらうことも検討しましょう。
まとめ
口腔内での細菌の増殖を抑える方法を確認してきました。
基本的には歯と舌に対する正しい口腔ケアと唾液の分泌を妨げない様に促すことが大切です。
口腔ケアは基本的なことではありますが、しっかりと行うと時間がかかるため不十分になりがちです。
唾液については、健康な若年者はあまり気にすることはありません。
加齢や全身疾患、服薬状況の変化によって対応が必要なことがありますので、唾液の分泌があまりに少ないと感じる場合にはかかりつけ歯科医などに相談しましょう。
日々のケアが細菌の増殖を抑えることにつながります。
基本を疎かにせず、予防に努めましょう。